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教授紹介

高木 力准教授
「魚」と「網」と「物理学」
近畿大学 農学部水産学科 高木 力准教授
「小さいころから生きものだけでなく、その動きや速度などにも興味を持っていた」という高木先生。先生が大学で教えているのは、魚の行動や漁網の形状などを、物理学を用いて解明する分野。「水産学は日本ではじまり、現在でも世界をリードしている学問。誇りを持って学んでほしい。それに、生きものの不思議を物理学や数学、最先端のコンピュータの技術を用いて解き明かすのはとても面白い」と先生。
■世界で初めてマグロの完全養殖に成功!

「近大マグロ」って知っていますか?デパートの食品売り場に行くと売っているので、見た人もいるかもしれません。近畿大学水産研究所が育てた、完全養殖(かんぜんようしょく)のクロマグロです。クロマグロの養殖というのは幼魚[子どもの魚]を獲ってきて、それをいけすでエサを与えながら大きく育てるのが普通ですが、近畿大学では天然のクロマグロを獲ってきて、そのマグロに卵を産ませ、卵から親魚まで育てて出荷しています。卵から育てて親魚にし、その成魚に卵を産ませて再び親魚にするのを完全養殖といいますが、クロマグロの完全養殖に成功したのは近畿大学が世界で初めてです。
 
日本人はマグロが大好きです。最近は外国の人も、健康に良く、おいしいというので、マグロをはじめとして魚を食べるようになってきました。たくさん獲れば、当然その魚は減っていきます。大学が養殖を始めたのは大切な魚資源を守るため。近畿大学が成功したマグロの完全養殖は、減少する魚を守る技術として注目されています。

■マグロが80km/hを超えるスピードで泳げるのは何故?

私の専門は水産物理学(すいさんぶつりがく)です。「水産と物理」と聞くと何の関係もないように思う人もいるかもしれませんが、「魚が高速で泳げるのはなぜか」「泳ぐにはどれくらいのエネルギーが必要なのか」「なぜ魚たちは群をつくって行動するのか」といったことを調べるには、物理学が必要になってきます。
 
マグロは時速80kmを超えるスピードで泳ぎます。なぜ、そんなに速く泳げるのか。研究室ではコンピュータで作った3次元のデジタル・マグロを使って泳ぐ様子をシミュレーションしたり、自動車や航空機で使われている技術を使って、高速で泳いでいるときに体が受ける水の抵抗などを測定して調べています。デジタルで再現されたマグロは、本物さながらに尾ひれをゆらして動く様子が観察できます。
 
なぜそんなことを研究するかというと、それらを知ることで「マグロは一日にどれだけ移動できるか」とか「10km泳ぐにはエサがどれぐらい必要なのか」などがわかってきて、マグロを養殖するときに役に立つからです。もちろん、マグロだけでなくほかの魚についても研究しています。

■「混(こん)獲(かく)」を防ぐ網(アミ)の開発で漁業を救う。

もうひとつ、私が研究しているのは魚をスマートに獲る技術の開発です。漁師(りょうし)さんは網を使って魚を獲りますが、現在の網だと必要としない魚や動物たちも全部かかってしまいます(=「混獲(こんかく)」)。そうではなくて、イワシを獲りたかったらイワシだけがかかる網、しかも子どものイワシは網の目から逃げていって、イワシの親魚だけが取れる網を使ったフィッシングです。


網を作ろうと思ったら、まず海中で網がどんなふうに広がり、どんなふうにして魚を獲るかを調べないといけません。しかし、光の射さない海中で、巨大な網が広がっていく様子を撮影(さつえい)することは不可能です。何十人もカメラを持ったダイバーを潜(もぐ)らせ、真っ黒な海中を照らし出す巨大な照明装置を持ち込めばできるかもしれませんが、そんなことをすれば莫大(ばくだい)なお金と装置が必要になってきます。魚もびっくりして逃げてしまいます。そこで、研究室でやっているのがコンピュータを使ったシミュレーションです。獲りたい魚だけを獲るために、どのくらいの大きさの網目がいいのか、どういう角度で網を落とせばいいのか、シミュレーションしていきます。

スマートというのは「賢(かしこ)い」ということ。魚は私たち人間にとって大切な資源です。今のように根こそぎ獲っていると魚は全滅してしまいます。賢く獲る技術の開発は、水産学を研究している科学者にとって、魚を大量に消費している日本にとって、一日も早く開発しなければならない課題です。

■ヒラメは飛行機!?

物理学の目で魚を見るといろんなことがわかってきます。例えば、ヒラメは長い距離を移動しようとするとき、尾ひれ、胸びれを動かして上昇(じょうしょう)し、その後、ひれを動かすのをピタッと止めて、頭を少し上げた斜めの姿勢をとって下降(かこう)してきます。これは飛行機やグライダーが飛んでいるときの姿と同じなんですね。飛行機やグライダーはできるだけ少ないエネルギーで、長距離を飛ぶために「揚力(ようりょく)」といって、機体を下から上に持ち上げる力を利用しています。翼も揚力を得やすいよう設計されています。面白いことにヒラメもこの揚力を利用して下降していることが実験や計算でわかってきたんですね。
 
水産物理学で魚の世界や漁業の世界を見ていくと、今まで見えなかったことや「これは面白い!」と世界中の人がびっくりするようなことなど、いろんなことが新発見できます。生物が好きな人はもちろんですが、水産学は物理や数学が得意な人にもチャレンジしてほしい分野ですね。

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