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教授紹介

松村雅史教授
今日、君は何回笑ったかな。
大阪電気通信大学 医療福祉工学部 松村雅史教授
「爆笑計を開発したヒントはどこにあったのですか?」と聞くと、「小さいころ、大好きでよく見ていた吉本新喜劇やバラエティ番組かな。よく、人間はどれぐらい笑うのかなと、数を数えたりしていました(笑)」と松村先生。このように実はとても身近なところにあるヒントから、医療の現場で人のために役立つようなものが生み出される…そんなところが、今までになかった新しいモノをつくることのおもしろさです、と先生は言います。
■「カラダ」の中にある情報を測る

私たちは病気になったり、体調を崩すと病院に行って熱を測ったり、心拍数や血圧、血糖値を測ったりします。でも、最近よく言われるようになった生活習慣病は、日頃のストレスや運動不足などが原因になって起っています。そういったことを予防するにはどうしたらいいかというと、日頃から体温や心拍数、血圧など人間の「カラダ」の中にある情報を計測して把握することです。これを生体計測学と呼んでいます。
 
人間の体に負担をかけないような小さな装置をつくって身につけ、数週間から数カ月、体温や血圧などのデータをとっていくと、お酒を飲みすぎた次の日には血圧が高くなったり、運動不足が続くと心拍数が乱れやすくなったりといったことがわかってきます。原因がわかれば、お酒を飲む量を減らしたり、運動をしたりすることで健康状態がそこなわれないように予防することができます。今、医療福祉の分野では病気を治すだけでなく、病気にならないように日頃から予防し、健康な心身を維持することの大切さが叫ばれていますが、生体計測学は予防医学の面で欠かせない学問といえます。

■「爆笑計」でストレス解消!

生体計測のなかで、私たちの研究室が重点を置いているのが「笑い」です。そこで、「爆笑計」という笑いの回数を計測する装置を開発しました。これは声をひろうマイクロホンを内蔵した首輪状のバンドと、コードでつながれた爆笑の回数を計測する装置がセットになったものです。
 
この「爆笑計」を8日間学生に付けて、こんな実験をしました。まず、最初の4日間は普段よりも多目に笑うようにさせ、後の4日間は笑わないで過ごさせて、朝、昼、晩のストレスを計測しました。人間はストレスを感じると、唾液の中にコルチゾールというホルモンが増えてくるので、この濃度を測って比べたんですね。
朝は眠った後なので、いずれもストレスが少ない。それが、昼になってくるとストレスが増えてくる。通学や授業など日常の生活でストレスがたまっていくんですね。ところが、夜になると、笑うようにした実験ではストレスが減り、笑わない実験ではそのままストレスが残った。残ったどころか、それが蓄積していって朝になってもストレスがとれなかったんですね。
 
この実験で、笑う回数が多いとストレスが少ないことがわかりました。また、この装置を使えばコミュニケーション(会話)の時間も測ることができます。その結果、会話が少ないとストレスが増えることもわかりました。友だちが沈んでいて元気がなければ話しかける。ひとり暮らしのおじいちゃんやおばあちゃんがいたら、ときどき落語や漫才に連れて行ってあげる。そういったことの大切さも、「爆笑計」は教えてくれます。
また、同じような実験を高齢者総合福祉センターや大学で行なったとき、落語家や漫才師の方に協力してもらいました。すると、誰がどれだけ笑いをとったか回数が出てきます。その実験には新聞社の方も取材に来たのですが、「芸人泣かせ」とか「お笑いコンクールや芸人のギャラの査定に使える」など、面白おかしく書かれて困ったことがありました(笑)。もちろん、そんなつもりでつくったものではありません!
 
今までの科学は人間の不自由をなくして、より便利に、快適にという方向で使われてきました。でも、これからは一人ひとりが人生を健康で元気に暮らせるように、日頃の生活の中で手軽に健康管理が図れ、生活習慣病といった病気を予防できることが重要になってきます。笑いの回数やコミュニケーションの時間も含めて、人間が健康を維持していくために重要な生体情報を計測する装置の開発はますます重要になっていきますよ。

■科学の基本、五感で感じる実験の大切さ

今でもそうですが、科学の授業でいちばん大切で、面白いのは実験です。実験をすると、目の前で光がでたり、音や熱がでたり、色が変わったりする。教科書や本で読んだ実験の結果はすぐに忘れるけれど、目、耳、鼻、舌、触感といった五感を通じて自分で体験した実験は、鮮明に印象に残り忘れません。また、自分で実験するためにはいろんなことを考え、準備や何かで苦労をしないといけない。結果がでれば、どうしてそうなったか解明しようと思う。それは科学者、技術者にとってエキサイティングであるとともに、科学の基本となるものです。
 
また、長さを測る、重さを測るなど「測る」というのも科学の基本です。今までは、人間が健康かどうかを測るモノサシは、体温や心拍数、血圧や血糖値といった数字でしたが、私たちが「爆笑計」を開発したことで、これからは患者さんのカルテに「笑いの回数」や「コミュニケーションの時間」といったことが書き込まれるようになるかもしれません。
私が“笑いが人の健康のために役立つ”というヒントをもらったのは、小中学生のときによく見ていた吉本新喜劇やバラエティ番組です。勉強ばっかりしていて、TVも見なかったら生まれなかったかもしれません(笑)。いろんなものに好奇心や関心を寄せること、それも科学者にとって大切なことですね。

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