



私が宮田先生の研究室で取り組んでいるのは、大気中に含まれているHBCDの量を測定することです。HBCDの正式名は「ヘキサブロモシクロドデカン」。舌をかみそうな、へんな名前でしょ(笑)。でも、とてもこわい化学物質なんです。繊維や壁材などを燃えにくくするために使われている化学物質で、いままではあたり前のように使われていましたが、ダイオキシンのように人間の体に悪い影響を与えることが最近わかってきたからです。
大気中にあるHBCDの量を測るために、私たちが使っているのは10兆分の1グラムまで測れる分析装置です。測定しようと思えば、その場所に装置を持っていかないといけません。そんなことは難しいですよね。そこで考えたのが、私たちの大学内の「大気中のHBCDの量」と、大学の中にはえている黒松の「松葉が吸ったHBCDの量」を測って、その量の相関性から「大気中のHBCDの量」を導き出す方程式(ほうていしき)を見つけだすことです。そうすれば、わざわざ装置を持って出かけなくても、その場所にある黒松の松葉を採集して大学に送ってもらえば、そこの大気中にあるHBCDの量がわかるからです。
いまはデータを取っている最中で方程式はまだ見つかっていませんが、もうじき見つかりそうです。なぜ松葉を使うのかというと、黒松は日本全国どこにでもある植物で、松葉には大気中の化学物質をためやすい性質があるからです。



薬学部に進んだ理由は2つあります。ひとつは化学が好きだったからです。小学校の夏休み、自由研究でミョウバンの結晶にチャレンジしたことがあります。それは失敗しましたが、教科書で見たミョウバンの結晶、ビーカーにつるした糸の先にミョウバンがつき、それが育って透明できれいな結晶になっていく様子は不思議で、感動的でした。それが化学に興味を持ったきっかけでした。もうひとつは、小さいころの夢が看護師で、薬剤師になったら看護師のように病気やケガで困っている人たちを手助けできると考えたからです。
4年次になって研究室を決めるとき、迷わず宮田先生の研究室を選びました。それは先生がダイオキシン問題など、有害な化学物質の研究で第一人者であり、最先端のことが学べると思ったからです。また、ダイオキシンをはじめとした有害な化学物質による汚染は、私たちの生命をおびやかすもの。薬剤師をめざすうえで、そういった命にかかわる化学物質のことを研究することも大切だと考えたからです。
勉強は難しいですが、好きな分野なので一生懸命がんばっています。物理は大学に入ってから初めて勉強しましたが、化学・物理・生物とさまざまな知識がつながり理解が深まっていくのは、とても楽しいですよ。