



笑うことによってストレス・ホルモンが減ったり、がん細胞が不活性化したりといったことが明らかにされてきたため、予防医学で笑いに注目が集まっています。そこで、笑いを科学的に計測しようとつくったのが「爆笑計」です。
爆笑計をつくるためには、まず笑いとは何かを定義しないといけません。そこで、先生や研究室の院生たちと一緒に考え、一定間隔で「ハハハハ」と4回以上、連続で大声で笑ったときのものを1笑いとしました。簡単に決まったようにも思うかもしれませんが、笑い方は男女や年令によってそれぞれ違うため、男女や子どもからお年寄りまで全ての人に使える「爆笑計」をつくるのは大変でした。
例えば、お年寄りの人は息が続かなくなって、「ハハ」とか「ハハハ」とか4回以下しか言わない場合がでてきます。でも、観察してみるとお年寄りの方は大笑いしている。そこで、パソコンのソフトを改良して、お年寄りの場合は2回、3回の笑いでも1笑いとカウントするようにするなど、工夫を凝らしているんですね。



「爆笑計」は喉にマイクロホンを当てて、口腔音(こうくうおん)をとっているのですが、笑いだけでなく、会話や嚥下音(えんげおん)[食物やつばを飲み込むときの音]なども計測することができます。最近、高齢者の嚥下障害が大きな問題になってきています。嚥下障害というのは、老化や疾病などによって喉の筋肉が衰え、食物を噛み砕いたり、飲み込むことが困難になる障害です。嚥下障害のある方は、食べ物や飲み物がうまく喉を通らないため、むせたり、もどしたりします。それがひどくなると、ご飯や水分を摂取しなくなり、栄養失調や水分不足、誤嚥性肺炎になって健康が悪化するケースも増えてしまいます。
私が主に研究しているのは「爆笑計」と同じ原理を使った装置をつくって、寝たきりの老人や嚥下障害がある患者が、一日にどれだけ嚥下しているかを計測することです。今はまだ病院と連携して、健常者と嚥下障害のある方の嚥下音の違いなどを識別しながら、正確に測れる装置を開発している段階ですが、この装置が完成すればそれぞれの障害の程度に応じて、リハビリを中心に一人ひとりにあった嚥下治療が行えるようになっていきます。また、将来的にはワイヤレスで自宅治療されている嚥下障害の患者が、今、どのような状況にあるかが逐一病院でもわかるようにしたいと考えています。
嚥下障害で苦しんでいる高齢者の方はたくさんいます。一日も早くこの装置を開発して、そんな人たちの役に立てたい。そう思ってがんばっています。