



串本(くしもと)[和歌山県]にある大学の水産研究所が、ぼくの研究のフィールド。そこでは卵からかえったマグロの子どもたち(1〜20cmぐらい)が、陸上の水槽(すいそう)で飼育(しいく)されています。その魚を対象に、「なぜ群れて泳ぐのか?」「どうやって群を作るのか?」など、マグロの行動を明らかにするのが研究テーマです。観察していると、マグロは子どもの頃によく壁に激突(げきとつ)します。親魚で時速80kmで泳ぐともいわれているマグロは、子どものときにもとても速い速度で泳いでいます。しかも、驚いたときは通常の約10倍の速度で泳ぎ出すため、そのまま壁に激突して背骨などが折れて死んでしまうんです。
研究してわかったことは、マグロの子どもたちが目に頼って泳いでいることでした。小学校の理科の教科書にも載(の)っていますが、魚には胴体に側線(そくせん)という器官(きかん)があって、そこで水の流れや圧力を感じながら泳いでいます。にごっていたり、薄暗い中でも魚がぶつからずに泳げるのは、この側線が働いているからです。ところが、マグロの子どもたちは側線ではなく、目に頼って泳いでいるため、急に明るくなったり、どこが壁かがわかりにくいような薄暗い環境だと壁に激突することが多くなるのです。また、親魚を使った研究では、成長すると目が良くなることもわかり、大人のマグロが夜でも壁に激突せずに泳げる理由がわかってきました。



「サイエンス・カフェ」って知っていますか?これは、一般の人たち、大学生、小中高校生に集まってもらって、コーヒーを飲んだり、ケーキを食べながら、ぼくたちが取り組んでいるマグロや微生物、環境や資源に関する研究を知ってもらおうと、近畿大学の若手の研究者が中心になって6回開催したものです。場所は大学構内や奈良町のカフェ。映像や実験、マグロの試食などもあって、とても楽しかったですよ。ぼくも講師としてマグロの行動の話をしたんですが、中学生ぐらいの子が目を輝かせながら耳を傾けてくれ、その子が後で「ぼくも近畿大学でマグロの研究をしたい」と言ってくれたときはうれしかったですね。
今はまだ目指すものが見つからなかったり、勉強はそんなに好きではない人もいると思います。ぼくもそうでした。でも、大学4年生になって魚の行動を研究するようになってから、水産学に夢中になりました。勉強でも何でもいいから、何かをがんばってやり遂げること。それがいちばん大切です。そして、水産に興味がわいたらインターネットで「サイエンス・カフェ@近大」を検索してみてください。「安全でおいしい魚を作るには」など、過去6回やった興味深い話が載っていますよ。