



中学生のとき、校内の池から取ってきた水を顕微鏡(けんびきょう)で見たことがあります。何も見えない水滴(すいてき)の中に、ケイソウやゾウリムシなど微生物(びせいぶつ)が生きて動いていた…。面白くて、夢中になって顕微鏡をのぞき込みました。でも、井上先生の研究室に入ってイオンビーム装置のことを知り、そのとき以上に興奮しました。微生物の大きさは0.1mm程度ですが、イオンビーム装置を使えば分子や原子といった10億分の1メートルの世界が見えるようになるんです。すごいと思いませんか。
顕微鏡はレンズを組み合わせれば作れますが、イオンビーム装置を作ろうとすると電気からコンピュータ、化学から物理までいろんな分野の専門知識が必要になってきます。「電気やコンピュータだけでもたいへんなのに、その上、化学や物理まで学べなんて、ゼッタイむり」と思うかもしれません。ぼくも最初はそうでした(笑)。でも、少しずつ知識を積み重ねていけば、必ず理解できるようになります。理解できるようになると、もっと知りたくなり、自分の手で作ってみたくなります。
今、ぼくは井上先生の研究室で、イオンビーム装置に組み込む制御(せいぎょ)回路(かいろ)を作っている最中です。作っていると、途中でいろんな問題がでてきたり、ここはこうした方が良いとかいったことがでてきます。それを自分なりに工夫したり、考えたりして作っていると時間が経つのも忘れてしまいます。周囲の友達はみんな就職活動で走り回っていますが、ぼくは大学院への進学を決めました。先生といっしょに作っているイオンビーム装置を、自分の手で完成させたいからです。このイオンビーム装置が完成できれば、世の中の「作る技術」に大きな貢献ができるからです。



超音波を使った距離計、4足歩行のロボット、太陽のある方角を向くヒマワリ(光を感知する装置)など、4年間にいろんなものを作りました。距離計は3m測れるように設計したのですが、実際には1.7mしか測れなかったり、4足ロボットもまっすぐ歩かず、右方向へどんどんずれていったりと、失敗もたくさんありましたが(笑)、その原因を自分で確かめ、改良を加えて思い通りに動かすのがとても楽しいんですね。
高校のときは受験勉強が忙しく工作の楽しさを忘れていました。でも、工学部に入っていろんな知識や技術を身につけるうちに、自分の手で作ってみたいという思いと、自分で作れるという自信がでてきました。井上先生は工学部の「工」は工作の「工」、工夫の「工」とよくおっしゃいます。工学部で学んでみて、先生の言葉の意味がよくわかりました。さっき言った装置やロボットは大学の授業で作ったものではなく、全て自分の興味で作ったものです。楽しいですよ、知識をもとに自分でモノが作れるのは!!